「心」や「精神」の問題についての正しい認識をもっていただくためページです。
■疾患

 不安障害・うつ病・統合失調症・老人性認知症など多様な状態・病状がみられますが、背景・原因として心理的・体質的・環境的なものなど様々なものが複合しています。

【徘徊と行方不明】

 最近の報道で、認知症の方の徘徊と行方不明が問題となっている。
 徘徊の可能性のある方への日常生活での見守りや対応が大切であるが、万が一不明になった時のための事前の準備も必要である。地域での見守り協力者との連絡や警察への捜査願いなどの事前準備について、川西市では「徘徊見守りネットワーク」などの対策を実施している地区がる。市や包括支援センターに相談されることをお奨めする。

【新型うつ病】

 うつ病にはいろいろなパターンがあり、原因や治療法が検討されているが、最近は「新型うつ病」というタイプが出現し議論されている。
 従来の「うつ病」は、「元気がなく、仕事も遊びもできない」。新型のケースでは「仕事はできないが、遊びはできる」などの場合があり、「自責」するよりも「他罰的」な考えが多い。 時代とともに病気も変わる。 学会では目下議論中である。

【うつ病と双極性障害】

 現在は「うつ病」診断基準が複雑化ししてきており、診断確定のためには時点時点での状態把握のみではなく、経過を見てから初めて決定できるというものも含まれます。肝機能検査などのように血液や画像で確定する方法がないことが困難の大きな理由であるようです。
 気力低下・活動性の低下が強い状態が「うつ」ですが、その対極にある過剰な元気状態を「躁状態」といいます。そして、その両方の状態を示す方を「双極性障害」といいます。かつての「躁うつ病」のことです。このような「うつ状態」「躁状態」「双極性障害」について、大きく一つの疾患単位として把握する診断基準が議論されているわけです。
 まだ、確定的な議論には至っていませんが、今後の研究が進展することを期待しましよう。

【歪められる記憶】

 ある場面で生じた「つらい記憶」も、その時点で刻み込まれて、そのまま一生変化しないというものではないらしい。その後の考え方・感じ方・他者の言動の影響を受けてすこしずつ変容し、歪められてしまうこともあるのではないかと考えられている。
刻み込まれた記憶は変わらないが、それを想起する段階で修飾されるのかもしれない。あるいは自分の現状に適合するように解釈されて出てくるのかもしれない。

【軽度認知障害】

 認知症までに至らない「もの忘れ」の状態をいいます。中年から始まる「ど忘れ・健忘症」の次の段階として、この「軽度認知障害」という概念が使用されます。日常生活の状態や認知機能検査を行うことによって判定します。明確に将来の認知症の診断を予言したり原因を特定できるものではありませんが、
将来「認知症」になる傾向があると思われ、場合によっては予防的な活動や予防的服薬などが考えられています。

【ギャンブル依存症】

 パチンコ・競馬・競輪などの博打に嵌ってしまうひとがある。かつては性格や道徳観の弱さとして説明されてきたが、最近は脳の機能に変化が出現してきており、治療の対象として考えられるようになっている。薬物依存・アルコール依存も治療の対象であるように、ギャンブルについても適切な治療が必要である。ただし、治療には本人の辞めるという意志や家族の支援、おなじ悩みをもつ人達との支え合いが必要である。また、かなりの時間をかけて見守っていかなければならない。

【遷延性うつ病】

 うつ気分が長く続き、日常生活にも支障をきたす状態で年余にわたって経過し、長く治療を必要とする場合に「遷延性うつ病」といいます。体質的な要因や強いストレスの存在、また適切な援助者の不在などが考えられます。
環境が固定化して、なかなか脱却できない場合もあります。さまざまな抗うつ剤にも良い反応がなく、十分な効果が見られません。
このように、治療抵抗性があり長くうつ状態で経過すると、その人の生活は悪循環に陥り、ますます環境は悪化していきます。
このような場合には、生活支援や社会的援助が必要となってきます。精神保健福祉士などとの相談が大切です。

【薬物依存症】

 これには、麻薬・覚醒剤などのきわめて強力で、身体精神に危険な薬物、また、アルコールのように通常の物質であるが、過度の摂取で依存・中毒をきたすもの。また、安定剤や眠剤など、本来は治療目的であるのに、過剰摂取や誤った利用で問題を生ずるもの。などがあります。
物質・薬物の種類により、出現する状態・中毒症状が異なり、また摂取を中止した時の「離脱症状・禁断症状」も違います。
いずれにせよ、疑いがあれば速く専門医に相談することが必要です。素人判断で「まあまあ」と見送っていると手遅れになります。

【広汎性発達障害】

 精神発達障害には、知的発達の障害や、自閉症などがあります。知的発達の遅れはないか、あるいは少ないが、対人コミュニケーションの障害を示す「アスペルガー症候群」があります。これらの障害については、各々独立したものと考えるのではなく、幅広く把握され、ある部分は連続的なものであるかも知れないと考えられます。このため「広汎性」という言葉が使用されています。

【社会不安障害】

 以前は「対人恐怖症」や「赤面恐怖症」などといわれていた対人緊張の症状のほか、人の多いところへ出かけることに不安をおぼえたり、会議や集会が苦手に思えたり、電車に乗ることが不安になったりすることがあります。抗不安薬や焦らずに少しずつ慣らしていく行動療法などが行われます。
不安障害・広場恐怖・パニック発作などとも関連しています。

【強迫性障害】

 何度も手を洗い続ける、些細な不安に取りつかれて考え続けるなど、「こだわり」が度を越した状態になり、自分でもその異常性に気が付いていながらも、それを止めることができない状態になります。これらを強迫思考・強迫観念と言います。性格的な傾向として出現する場合や、他の精神疾患に伴って出現する場合があります。
薬物療法や認知行動療法がおこなわれ、「森田療法のあるがままの受容」を指導する精神療法などが行われます。

【5月危機】

 4月には、新学期・新入学、就職・転勤など様々な出来事や変化が起こります。そして一か月すると5月を迎えます。また5月には連休があり、生活リズムに変動が起きやすく、このときに、考え方や感覚・感情が揺らぐことがあります。4月からの新しい環境で戸惑い、疲れやストレスが溜ったところで不安や憂鬱な気分が出現しやすくなるのです。これを「5月危機」という学者もいます。いずれにせよ、ストレスを一人で抱え込まないこと、早めに相談することなどが必要です。

【幻覚・妄想】

 幻覚というのは、実際には存在しないものを知覚することで、「幻聴」「幻視」などがあります。その場にいない人の声が聞こえてきたり、存在しないものが見えたりします。
妄想は、現実に発生していないことがらを、実際のことであるかのように考え、思い込んでしまうことです。これらを「事実ではない」と説明しても、訂正することができません。
統合失調症、老人性認知症をはじめ、さまざまな精神的疾患でみられます。
この症状への対応の仕方については、専門家の意見を聞くことが必要です。薬物治療も必要です。

【認知症の問題行動】

 認知症は、記憶の障害や見当識の障害などを中核としますが、幻覚や妄想、睡眠障害・いらいら・怒りっぽくなるなど、周囲の人にとっても影響の大きい「問題行動」が多く見られます。これに対しては、環境調整や対応の仕方を工夫するなど、介護的な方法で軽減することもありますが。しかしそれでも対応できない場合は、少量の安定剤や向精神薬を使用することによって症状が和らぐことがあります。ただし、眠気やふらつきなどの副作用に注意しなければなりません。

【不眠症】

 悩んで眠れない・興奮して眠れないなど、人間の睡眠は心の状態で左右されることがあります。また統合失調症やうつ病でも不眠が多く見られます。
中高年者では、加齢に伴って脳波リズムの変化があり、熟睡感の減少や中途覚醒・早朝覚醒が出現します。また「不眠不安症」という場合もあって、「今晩眠れるかどうか?」が異常に気になってしまい、仕事が手につかず生活に支障がでるといい状態になります。
「不眠症」にはいろいろの原因のものがありますので、それに応じた治療法(生活指導・薬物療法・精神療法)が必要です。
「睡眠薬は怖い」と思っているひとが多いようですが、最近は安全性の高い薬剤が開発されており、名称も「睡眠誘導剤」というようになっています。医師の指導の下に服用すれば安全です。

【自律神経失調症】

 自律神経というのは、脳と脊髄を通じて身体の各器官を制御しているものです。緊張すると胃が収縮する。心臓の鼓動が速くなる。運動すると汗を出して体温調節をするなど、からだのバランスを保つために時々刻々、自動的(自律的)に動いています。人間は自分の意志で胃を収縮させたり、脈を速くさせたりすることはできません。自動的・自律的に調節されるようになっています。この自律神経がバランスを崩すと、不自然な胃の動きや脈拍が出現し、不快感・不安感を生じます。これが自律神経失調症です。更年期やストレスなどで出現することもあります。

【ひきこもり】

 「ひきこもり」は、社会との接触が苦手で、自宅や狭い生活範囲にとどまってしまっている状況をさす言葉です。背景となる病気には、社会不安症、うつ病、統合失調症、性格などいろいろです。年々患者数は増加しており、社会的にも問題となっています。 また、医療機関や相談機関へ出向くこと自体も困難な人が多く、十分なケアーがなされているとは言いがたい状況でもあります。通常の医療体制や相談体制以外に、時間と手間をかけた対策を実行する必要があります。また家族の方との協力が必要です。

【うつ病】

 うつ病にかかる人は増加していると言われています。最近の自殺者の増加の原因ともなっており、社会的問題として取り上げられるようになっています。
ストレス(人間関係・仕事など)、過労などで誘発され、神経化学的には脳内の神経伝達物質であるセロトニンの減少がみられます。
睡眠や食事を適切にし、ストレスの軽減をはかり、抗うつ剤・抗不安剤などを服用することで改善がみられます。
しかし、病態は多様で治療法もそれにあわせて様々な工夫が必要となります。

【ノイローゼ】

 かつては「ノイローゼ」(神経症)という病名が用いられていました。悩みやストレスから来る障害をいい「不安神経症」「強迫神経症」「離人神経症」などいろいろな分類がされていました。また一般社会でも悩んでいる人を見て「ノイローゼになるよ」などと用いられていました。
しかし、精神医学の分野では最近はこの言葉は使わず、「不安障害」「強迫性障害」などという用語に変わっています。
その背景・理由としては、脳の神経生理学・生化学の発達や認識・自己制禦などについての新しい所見に基づいて、病気をとらえ直すことが行われているからです。同時に科学的所見に基づいた適切な薬物の開発・使用も進歩して来ているのです。

【パニック障害】

 自然発生的で予期できないパニック発作を特徴とする疾患です。パニック発作とは、数十分から一時間位の持続する恐怖または不安です。動悸,発汗、震え、息切れ、窒息感,胸痛、嘔吐、めまい、冷感など身体症状を伴うこともしばしばです。さらに、死の恐怖を感じることもあります。身体症状が強いため、一般内科を受診し検査を受けても異常が見つからないことが多くあります。頻度も年数回から1日何回もおこす人までさまざまです。しばしば広場恐怖を伴います。特にパニック発作が起こったときにすぐに出られない場所で起こすことが多いです。薬物療法などでコントロールします。


図:脳の中央部が反応

【認知症】


お寺参りも

 以前は痴呆といわれていた疾患です。その表現が侮蔑的であるということで改められた名前です。しかし、認知症という名前はこの疾患の特徴を現しています。主に認知症では知ることの機能の障害が出現するからです。一般的知能、学習と記憶、言語、問題解決能力,見当識、知覚、注意力、集中力、判断力、社会的判断能力などが障害されます。さらに、人格の障害も出現することもあります。脳血管障害から起こる血管性痴呆、脳自体の変性が出現すアルツハイマー型痴呆のほか、Pick病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、パーキンソン病、HIV関連痴呆、頭部外傷関連痴呆などが存在します。認知症の種類によっては進行の抑制をする薬剤も存在します。

【アルツハイマー型認知症】

 アルツハイマー型認知症の症状としては
(1)記憶障害や判断力の障害など中心となる症状
(2)それに伴って起こる周辺の症状の二つがあります。
アルツハイマー型認知症の中心となる症状を根本的に治療する薬は今のところありませんが、中心症状の進行を遅らせる薬はあります。
症状の進行を抑制する事により、ご家族と一緒に過ごす貴重な時間を長くする事ができる可能性があります。
また、ご家族の方を悩ませているのは、おもに周辺の症状だと思います。妄想や幻覚、徘徊、不安、抑うつ状態などが、それに当ります。
これらのうち幻覚や不安や抑うつ状態などの精神症状、徘徊などの問題行動などは、向精神薬や向不安薬によって、症状を改善させたり、軽くしたりする事ができます。


図:脳の変性萎縮

【社会不安障害】


他人の視線が気になる

 以前は対人恐怖症などともいわれていたものを含みます。
他人の眼の前で字を書いたり、話したりすると緊張してしまったり、人の多い所では強い不安を感じます。
その結果として人のいる、緊張する場面を避けてしまいます(回避)。
極端な場合は「ひきこもり」になります。
薬物療法や精神療法が適用となります。

<統合失調症の新しい薬がでました>
  ロナセンという商品名です。ドーパミンとセロトニンをコントロールすると言われています。定型薬といわれるものと、非定型薬と言われるものの間の作用をもっているようです。肥満や無月経などの副作用が少ないのではないかともいわれています。作用や有効性・副作用などについて、これから使用経験が集約されていくことになります。

【統合失調症】

 統合失調症は、慢性で重度な生活機能低下を伴う、脳の疾患です。世界中どの国においても、人口の1%が統合失調症を発症するとされ、決して珍しい病気ではありません。男女間に発生率の差はありませんが、男性においては女性より年齢的に若く発病期を迎えます。適切な治療を行わないと症状は徐々に進行していく慢性の疾患であり、病院に行かずに何も治療しないでいると、再発を繰り返しながら徐々に社会生活機能を失っていきます。
 統合失調症を発病する人の多くは、10代に前駆症状が現われます。例えば、人との会話が疎遠になるなど陰性症状と呼ばれるものです。20代になると、幻覚や妄想など陽性症状と呼ばれる明らかな精神症状を見せるようになります。陽性・陰性症状が一時的に軽減・消失する緩解と症状の悪化を繰り返しながら、次第に社会に適応する力が低下していきます。
 症状が続いた場合、患者さんの多くは学業や仕事にも支障がでることがあり、家族や周りの人々からの適切な支援、介護が必要となっています。

 


図:脳神経細胞

「すまいるナビゲーター」より
 統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患で、その原因は脳の機能にあると考えられています。
 約100人に1人がかかるといわれており、決して特殊な病気ではありません。思春期から40歳くらいまでに発病しやすい病気です。
 薬や精神科リハビリテーションなどによる治療によって回復することができます。

すまいるナビゲーター
http://www.smilenavigator.jp/

 

 
■治療

 病態や原因に応じて薬物療法・精神療法・環境状態などを組み合わせる必要があります。単純に「気のせいだから、頑張れば治る」とか「精神的なものだから、根性を入れかえたら治る」などというものではありません。

【加齢とフレイル】

 高齢化社会となって、医療と福祉の基本的な考え方も少しずつ変化している。
加齢現象には個人差が大きいので、同じ年齢であっても同じ対応でよいということはない。最近では、高齢者の状態で筋力・体力・回復力の低下が進行する状態を「フレイル」ということにしているようだ。換言すれば「老衰過程とその状態」と言える。
 加齢を受容しつつも、適切な運動や栄養について、十分な注意と予防を行おうとする考え方だ。これには、当事者・医療者・福祉者、それに家族の方々の協力が大切である。


【精神療法】



 精神療法については、多くの手法があり、精神分析(この中にも多くの流派がある)・認知行動療法・森田療法・内観療法などさまざまであるが、絶対無二のものはない。
また、それを行う施術者の個人差(理論・手法)もある。また、一回に1時間近くかかるような手法では、普遍的なものにはならない。
 現在、世界的にも、また日本でも主流であるのが、支持的精神療法を基本としたものである。これには、生活指導・具体的な指示も含めた短期的な解決手段の提示などが含まれる。

【脳科学】

 脳の働きを科学的に理解しようということであるが、なかなか困難なところが多い。
日進月歩で進歩しているが、まだまだ十分な答えは出ないであろう。
 脳の研究の大きな流れは、@「病気の原因」を解明して治療へ導くこと、A「もっと良い状態」へ導くこと、のふたつになると思われるが、Aについてはそれを判定する価値観が問題となるので慎重な対応が求められる。
 いずれにせよ、人間の精神や心理については慌てずゆっくり「科学」を用いていきたい。慌てて「科学」に振り回されないようにすべきである。


【身体的拘束と薬物的拘束】



 精神疾患や認知症で落ち着かず問題行動、例えば、興奮して歩き回る、近くの人に粗暴行為をする、妄想や幻覚で危険な行動を示すなどがある場合、危険や不慮の事故を避けるために、やむを得ず体をベルトなどで拘束することがあります。また抗精神病薬などを使って鎮静させる方法がとられることがあります。
 しかし、このような拘束行為は、人権侵害の行為に当たるので厳しく規制されています。認知症で問題行動を示す人が多くなっているので、抗精神病薬の使用が増えています。慎重に使用する必要があります。

【違法ドラッグ】

 危険な精神作用物質が流通している。これらは「薬」として利用されているのではなく、異常な精神状態を享楽するために造られ、営利目的に販売されている。売るほうも買うほうも厳しく取り締まられなければならない。
 享楽的な依存症はそこから離脱することが大変難しい。「一回ぐらい」といった好奇心や興味本位での接触が大変な事態を引き起こす。
 精神的依存・身体的依存、いずれも大変深刻なものである。


【精神疾患と免許・資格】



 かつては色盲や精神疾患があると、多くの資格や免許については欠格条項(資格取得に制限)とされていたが、現在は実際の生活や業務に支障がない限り認められるようになってきている。
 しかし、最近はけいれん性の疾患を持つ人の重大交通事故をきっかけに、診断書を求めるという当局の方針が表明された。賛否両論あるが、慎重な議論に基づく対応が必要である。各学会でも検討されることになる。

【多剤投与】

 たとえば、不安障害の患者さんの治療で、1種類の薬でしかも有効な最少量で済ませることができたら、最適な治療であるといえる。しかし、日本全体でみると2種類以上処方されていることが多いという。このようにどの疾患であっても「多剤(2種類以上)投与」となっていることがある。症状や状態がさまざまで複雑であるために、複数の薬が使われるのであるが、安易にあれもこれも使うということは避けなければならない。特に不眠に対して多剤を使用することは、習慣性・依存性などに十分な注意が要る。
 同じ系統のくすり・作用の類似したくすり、などは避けることが望ましい。副作用の可能性も高くなるので注意が必要である。


【復職リハビリ・プログラム】



 現代は、うつ病やストレスで休業に至る人が増えている。この方々が、治って落ち着き、仕事に戻ろうとするとき、いきなり元と同じ状況に戻ると、同じ環境で同じストレスを受けて再発してしまうことが多い。このため適切な助言を行い、練習期間など設定し、職場の人々の協力体制を得て、着実に復職する方法が望ましい。最近はこのような「リハビリ出勤」制度を行う企業が増えている。

【自殺予防】

 毎年の自殺者数が3万人以上で高止まりしており、国としての対策が進められつつある。「うつ病」から自殺に至る人も多いので、早期発見・早期対応などが求められている。相談体制や、薬物治療も含めた医療対策、企業や家庭での支援体制の構築など、少しずつ進めていかなければならない。
自殺問題は、死亡された本人の問題だけではなく、残された家族の問題であり、大きくは社会の損失につながることでもある。
原因としては、失業や人間関係のもつれ、企業・社会でのストレスなど多様である。それだけに広い視野に立った対策が必要である。


【国の5疾患5事業、精神疾患を重点項目に挙げる】



 本年7月、国は従来の「4疾患5事業」に精神疾患を追加して「5疾患5事業」とした。これは、うつ病や老人性認知症などが増加したこと、うつ病による自殺者の増加などに対応したものである。従来は、ガン・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病の4疾患が重点対策対象であったが、これに追加した。国から様々な施策についての予算が講じられることになる。
立ち遅れている「精神科救急体制」なども対象となる。今後に期待したい。

【加齢に対する考え方の動向】

 医療技術の進歩は止まらない。10年前なら死んでいた病気が、今では治せるというものも多くなった。一方「加齢」「老人問題」については、医療だけではなく、哲学的に捉え直そうという動きもあるようだ。「尊厳死問題」「遺言」など、高齢者向けの発言や問題提起も多くなってきている。「アンチ・エイジング」という考えのほか、「アロング・エイジング」という考え方もある。
「加齢:エイジング」はマイナス・イメージとしてとらえられていることが多いが、ポジティヴとはいかなくとも、ニュートラル・イメージぐらいにはしときたいところである。


【認知症の新しいくすり】



 近日中に、認知症に対する新しい薬が3種類発売されます。従来からあるアセチルコリンに働くタイプのもの、新たにグルタミン酸に作用するものなどがあります。ただ、残念ながら認知症を完全に治せる薬ではなく、進行を緩めるものです。しかし、今までの薬で副作用があって服用できなかった方にも、使用できる可能性があり、治療手段の選択が広がってきました。

【性格は変えられるか?】

 この問いに対する答えは大変難しい。行動療法・認知パターンの修正などの精神療法によっても、割合に早く修正できる人もあれば、なかなか変えることができない人もある。本人の意欲も必要だが、環境の調整が伴わないと効果が出ない場合もある。
また、どのように修正したいかについて、本人の希望が、可能で適切な範囲のものであるかどうか、実現性のある範囲のものか?という問題もある。
しかし、とにかくやり始めてみるという気持ちが必要であろう。少しでも前向きになれればいい。。


【脳の画像診断】



 CT・MRIなどの画像診断器具の発達は目覚ましく、開けてみることのできない脳の病気の診断にも威力を発揮しています。
脳腫瘍・脳出血・脳梗塞などのほか、認知症における脳委縮の状態や、脳内の血管の異常などが詳しく分かるようになってきています。ただ、まだ完全というところまではいかないのも事実です。
うつ病や統合失調症などの病気についても、脳の特定部分の変化や体積を計測する研究も進められています。研究が進めば診断技法・診断基準なども、もっと整理されてくるかもしれません。今後の展開が待たれます。

【不眠症の新しい薬】

 ラメルテオン(ロゼレム:武田薬品)が発売になっています。従来の精神安定剤系統とは違う作用機序をもったもので、睡眠の自然の機構に働きかけるというものです。睡眠は脳の視交叉上核というところでコントロールされているといいます。この薬はその部位でメラトニン受容体に作用して、睡眠を改善します。メラトニンは脳の松果体でつくられる物質で、睡眠に大きな作用を持っています。但しこの薬は「うつ病」の薬のうち「SSRI」というタイプのものとは併用できません。


【服薬状況の管理】



 精神科の薬剤については、有効性や副作用の検討以外に、服薬状況の把握が大切です。薬をもらってもキチンと指示どうりに飲んでいるか? 患者さんが納得して安心して飲んでいるか? こどもが間違って飲んだりしないように適正に保管しているかなど、さまざまの観点からの把握が重要です。そのためには、医師との対話や家族の協力が必要です。
飲み忘れてあまった薬をどう処分するか、などについては主治医や薬剤師と相談するとよいでしょう。

【神経伝達物質の制御】

 神経伝達物質は、脳神経細胞の結合部シナップスで刺激を伝達する物質で、うつ病ではセロトニン、統合失調症ではドーパミンなどが作用しています。
これらを制御して病状を改善しようというのが薬物療法です。制御には、伝達物質の放出を増減させたり、物質の受容体という受け皿を活性化したり、物質の循環や再取り込みを制御したりする方法がとられています。仕組みは大変複雑で完全に解明されているわけではありませんが、すこしずつ研究が進んでいます。
またこれらの制御は、薬剤だけではなく休養や訓練などの方法で進展させることもあり、精神療法や安静・適度の活動などの指導も重要です。


【認知症の薬の開発】



 日本で発売されている「認知症」の薬は、アルツハイマー型認知症に対する「ドネペジル」だけです。この薬は、すでに機能の落ちてしまった神経を再生させるまでの効果はありません。
今後は、有害な「βアミロイド」を脳内に蓄積させないようにする作用をもった薬剤や、蓄積したものを排出する薬剤などが望まれます。研究は少しずつ進行しているようです。

【うつ病の新しいくすり】

 2009年9月に、新しいタイプの抗うつ剤がでました。ミルタザピンといい、作用面では、セロトニンやノルアドレナリンに作用する薬剤です(NaSSAと略称)。すでに外国では10年以上前から使用されているもので、日本でも漸く発売されることになりました。


【性格と遺伝子】



 十人十色といいますが、性格も人それぞれに違っています。性格には遺伝的に引き継いだ部分と、成長の過程で身に着けた部分があるといわれています。最近の研究では、遺伝子の多形性によって決められる性格傾向があるのではないかとも言われています。あるパターンの人は、好奇心が旺盛であるとか、ウツ気分になりやすいのではないかという研究があります。人間の行動は複雑な要素の絡みで決定されているので、安易な評論はできませんが、自分というものを知るためには、このような情報も意味あるかもしれません。

【クリニカル・パス】

 最近医療現場でよく使われるようになった言葉です。ある病気で入院した場合など、検査・診断・処置などの予定と、それによってどのような結果が予測され、その程度の時間が必要かなど、一定の予測・計画を作成します。それをクリニカル・パスといいます。どのような病気であっても、患者さんはこれからどうなっていくのかということについて大きな不安をもっていますが、クリニカル・パスがあると、自分の病気についての理解ができるようになり、少しは安心感がえられます。従来も「説明」は十分になされてはきましたが、これをあるひとつの様式として提示しようという動きです。しかし、これはあくまでも予測であって、その意味では医療内容がよくなるとか、新しい医療法ができたというものではありません。また医療者と患者さんが契約書を交わすというようなものでもありません。


【自助組織】



 アルコール依存症・薬物依存症などの人の治療には、医師やケースワーカーなどによる薬物療法・精神療法・環境調整などに加えて、重要なものが「自助組織」と呼ばれるものです。同じ病気・悩みをもつ者同士がお互いに支えあうものです。依存症のつらさや苦しさを理解できるもの同士が、共同して依存からの脱却を支援するのです。「断酒会」や「ダルク」などが活動しています。

【向精神薬の働き】

 向精神薬の働きの中で、「神経修復作用」と言われるものがあります。これは、幻覚・妄想など、あるいは情動不安定・意欲の減退などの症状に対して、薬剤は一時的効果を持つのみではなく、「傷ついた・あるいは傷害された神経細胞」を積極的に修復していくという作用です。一時的に症状が取れたからといって薬をやめてしまうと、病気がぶり返し、神経は再び傷害されてしまうことになる。したがって薬剤を継続して服用していれば、常に修復が行われて、病気の進行を予防できるということになります。この作用の研究は今後も進められていくでしょう。


【薬物療法】

 内科・外科の病気も多くは薬物療法の対象となります。精神科疾患もその例外ではありません。向精神薬(安定剤)は60年近くの歴史をもち、多種多様なものが開発使用されています。
現代の精神科治療では欠かせない治療法の一つです。
薬物の効果と副作用なども説明してゆきます。


多くの種類の薬が開発されています

【精神療法】

 病める人の考え方(思考)・感じ方(感情)・習慣・性格などをよく聴き、マイナス思考に陥っている状態からの脱却を指導します。
一方的に説教をしたり、命令したりするものではなく、少しずつ適応力を回復してゆけるように働きかけるものです。このためには時間もかかります。また治療者には充分な経験が要求されます。

 
【認知行動療法】

 あるストレスに直面すると、人それぞれに反応が違います。うまく反応して処理できればいいのですが、反応がうまくいかないと「不安」や「焦燥」「うつ気分」が出現し、それらが繰り返され固定化すると「障害」状態に至ります。 このような繰返しを修正するために、「習慣的な反応(認知パターン)」を自覚し、適切なものに次第に変えていく、そのためには、考え方(認知)だけではなく練習「行動」を計画して、少しずつ努力を重ねることが必要です。 そのためには、十分な理解と計画、実行が大切となります。

 
【向精神薬】



 精神状態(気分・感覚・行動など)に対して影響を与える薬物を「向精神薬」といいます。アルコールを飲むと気分が開放されて陽気になることがありますが、こういう場合にはアルコールもクスリの一種といえます。
 医学・薬学の進歩研究により、さまざまな薬物が開発され、主なものに抗うつ薬、抗不安薬、抗幻覚・妄想薬(抗精神病薬)、情動調整などがあります。

★これからも項目を増やしていきますので、またご覧ください。

ご案内

認知症のための介護ガイド
 初めて介護が
     必要になったとき

 認知症に対する認識が変化し改訂第2版を発行しました。今回認知症の病態記述は他に譲り、介護者の投稿体験談を増補いたしました。


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